女装をしている時間は楽しいのに、ふと「自分は何をしているのだろう」と不安になることがあります。もっと続けたい気持ちと、やめたほうがいいのではないかという気持ちが、同時に出てくることもあるでしょう。
けれど、女装する自分をどう受け止めるかに、ひとつの正解はありません。すぐに答えを出さなくてもかまいません。まずは、自分の中にどのような気持ちがあるのかを、少しずつ確かめていくところから始められます。
女装する理由を、ひとつに決めなくていい
女装を始める理由や、続けている理由は人によって異なります。
- いつもとは違う服やメイクを楽しみたい
- 鏡に映る自分が変わっていく過程が好き
- 普段とは違う振る舞いをしていると落ち着く
- 写真や創作、ステージ表現として楽しみたい
- 誰かと交流するきっかけがほしい
- 自分の性別や生き方について確かめたい
いくつかの理由が重なっていることもあれば、続けるうちに理由が変わることもあります。「本当の理由」を見つけなければならないわけではありません。
女装しているときも、していないときも、どちらも自分の一部と考えることができます。反対に、女装を日常とは別の趣味や表現として楽しむ人もいます。どちらの捉え方であっても、その人自身が無理なく続けられるのであれば問題ありません。
楽しい気持ちと戸惑いは、同時にあってもいい
女装に対して、楽しさだけではなく、恥ずかしさや罪悪感、不安を抱く人もいます。
その気持ちは、女装そのものを嫌っているから生まれているとは限りません。「周囲に知られたらどう思われるだろう」「家族やパートナーとの関係が変わるかもしれない」といった心配や、これまでに触れてきた価値観の影響が重なっている場合もあります。
気持ちが整理できないときは、次のように分けて考えると、何に悩んでいるのかが見えやすくなります。
- 女装している時間そのものは楽しいか
- 何をしているときに落ち着く、または苦しくなるか
- 自分が嫌なのか、誰かに知られることが怖いのか
- 本当にやめたいのか、不安なく楽しめる環境がほしいのか
すぐに結論を出すための質問ではありません。その日の気分によって答えが変わってもかまいません。
上手に見えることは、女装してよい条件ではない
メイクが思いどおりにできない、服が似合っているように感じられない、写真に写った自分を見て落ち込む。女装を続けていると、そのような日もあります。
ただし、若く見えること、細く見えること、女性に間違われることは、女装を楽しむための資格ではありません。SNSで反応を集めることも、続けてよいかどうかを決める基準ではありません。
技術を身につけたいなら、メイクや服の選び方を少しずつ試すことができます。一方で、上達や変身の完成度を目標にせず、好きな服を着る時間そのものを楽しむ選択もあります。
「今日はこの色が好きだった」「前より落ち着いて外に出られた」「家でゆっくり過ごせた」といった小さな実感も、自分に合った楽しみ方を見つける手がかりになります。
自分を説明する言葉は、急いで決めなくていい
女装を始めると、自分の性別や恋愛、性的な関心まで、すべて説明できなければならないように感じることがあります。しかし、服装や表現の好みだけで、性自認や性的指向が自動的に決まるわけではありません。
自分にしっくりくる呼び方があるなら使ってもかまいません。まだわからない場合や、特定の言葉で自分を決めたくない場合は、無理に名乗る必要はありません。
「今は女装が好きだとわかっている。それ以上のことは、まだ決めない」という状態も、ひとつの答えです。
誰かに話すことと、自分で受け止めることは別
自分の中で女装を肯定できるようになったからといって、すぐに家族や友人へ話す必要はありません。
話す、話さない、信頼できる一部の人にだけ話す、もう少し考えてから決める。どの選択が合うかは、生活環境や人間関係によって変わります。自分の安全や暮らしへの影響を考え、話す相手とタイミングを選んでもかまいません。
誰かに公表することを、自分を受け入れられた証明にしなくても大丈夫です。自分の中で大切にしていることと、他人にどこまで伝えるかは、分けて考えることができます。
無理なく続けられる形を探す
女装を受け止めることは、生活のすべてを変えることではありません。自分に合う距離で取り入れることもできます。
- 自宅だけで楽しむ
- 女装できる店舗やイベントを利用する
- 写真を撮っても、インターネットには公開しない
- 信頼できる人とだけ交流する
- 費用や時間の上限を決める
- いったん休み、また楽しみたくなったら再開する
続け方は、途中で変えてもかまいません。以前は楽しかった方法が合わなくなったり、しばらく離れたあとに気持ちが戻ったりすることもあります。
大切なのは、「女装する人ならここまでしなければならない」という周囲の基準ではなく、自分の生活を守りながら楽しめる範囲を見つけることです。
苦しさが大きいときは、一人で決着をつけなくていい
女装について考えるたびに強く自分を責めてしまう、眠れない状態が続く、仕事や生活に大きな影響が出ている。そのようなときは、一人で結論を出そうとせず、信頼できる人や相談機関、医療・心理の専門家に話す方法があります。
相談するときも、女装をやめるか続けるかを、最初から決める必要はありません。「自分の気持ちを整理したい」「不安との付き合い方を考えたい」と伝えるだけでもかまいません。
女装する自分を受け止めることは、無条件に好きになろうとすることではありません。迷いや不安があることも含めて、自分の気持ちを否定せずに見ていくことです。急がず、自分が少し楽でいられる考え方と続け方を探していきましょう。